中学硬式野球選手を対象とした研究であるので軟式、硬式による違いを検証するために、今回は中学軟式野球選手がソフトボールを用いた打撃練習が打球速度に与える即時効果を明らかにすることを目的とする。
0.目次
1.緒言
現場では、
スイングスピード向上を目的として
ソフトボールを使ったバッティングを
行うことがある。
ソフトボール
(直径91mm、重さ190～195g)は、
中学生が使う軟式野球用ボール
(直径72mm,重さ138g)とは
重さも大きさも違うので
押し込んで力を加えていくように
打つことが多い。
勝亦ほか(2017)では、
筋力、パワートレーニングと
ソフトボールを用いた打撃練習は、
打球スピードおよび
それを決定する要因である
スイングスピードの向上に
有効であるとされている。
ただ、以前私が実施した
中学硬式野球選手を対象にした
ソフトボールを用いた打撃練習が
打球速度に与える即時効果(1)では
打球速度向上につながらなかった。
この研究は
中学硬式野球選手を対象とした
研究であるので
軟式、硬式による違いを検証するために
今回は中学軟式野球選手が
ソフトボールを用いた打撃練習が
打球速度に与える即時効果を
明らかにすることを目的とする。
2.方法
本施設のパーソナルレッスンに
通っている中学生軟式選手
(中学1年生1名、中学3年生4名)
5名を実施。
選手から全力で振れるといった
自己申告後、ティースタンドを用いて
バッティング練習で5球のバッティングを行い、
Rapsodo®を用いて、打球速度を測定。
その後ソフトボール(図1)と
ティースタンドを用いて
バッティング練習(5球)行い、
再度ティースタンドを用いて打撃し、
Rapsodo®を使用して
打球速度の測定を行う。
選手が測定時に使用するバットは
それぞれが
普段から使用しているバットを使用した。
ソフトボールと
ティースタンドを用いた
バッティング練習では、
こちらが用意した
竹製バット(図2)を使用させた。
またソフトボールを打つ際の意識として、
遠くに飛ばす意識で打つように指示した。
図1 検証で使用したソフトボール (直径91mm、重さ190～195g)
図2 検証で使用した竹製バット(83cm、900g)
3.結果
結果は図3、図4、図5、図6の通り。
実施した5人中4人が打球速度が向上し、
数値としては最高値は1.6km/h、
平均値としては1.2km/h向上した。
5人の平均値としては、
0.66km/hとなった。
図3 検証メニュー前後のRapsodoデータの比較
図4 打球速度測定 増減
図5 打球速度増加選手のRapsodo測定データ
図6 打球速度減少選手のRapsodo測定データ
4.結論.考察
以前私が実施した
中学硬式野球選手を対象にした
ソフトボールを用いた打撃練習が
打球速度に与える即時効果(1)とは違い、
増加人数は4人となり
平均値としては0.66km/hとなった。
また全体の傾向として平均打球速度も向上した。
打球速度が低下してしまった選手の特徴として、
実施後では打球角度の数値は
低下したが回転数が増加してしまった。
回転数や打球角度の数値が下がることで
打球速度が上がりやすくなることは、
今までの重いバット(2)、
軽いバット(3)、
長い棒(4)によって傾向があったが
今回の測定からもその傾向が確認された。
また全体の傾向として平均打球速度も向上した。
今回硬式選手は打球速度の数値が低下し、
軟式選手は打球速度の数値が
向上した理由として考えられることは、
ボールの違いによる
インパクト時の変化だと考えられる。
田渕ほか(2013)では、
硬式野球用ボールと
軟式野球用ボールの
打ち出し特性の比較が研究されている。
その中の違いとして、
バットとボールの接触時間が
軟式野球用ボールの方が
長く測定されたとある。
硬式選手の場合、
ソフトボールを打つことによって
押し込むような形になった可能性があり
打球速度が低下したと考えられた。
また谷中ほか(5)の論文では、
インパクトの瞬間のみに
力発揮を強調するのではなく
スイング開始からバットに力を加え、
インパクトまでにバットを
最大限に加速させることで
スイングスピードが向上するとあるが、
軟式野球用ボールの場合であれば、
わずかながら接触時間が長くなることから
押し込む動作になったことで
打球速度が向上したのでは
ないかと考えられる。
以上のことから軟式選手が、
ソフトボールを用いた打撃練習は
打球速度に与える即時効果は
あると考えられる。
軟式野球用ボールでは
バットとボールの接触時間が
伸びる特性があり、
ソフトボールのような
重く大きいボールでは
接触時間が長くなり
押し込むように打つので
実施後の測定でも
押し込む動作によって
打球速度が上がったのではないかと
考えられる。
軟式野球用ボールと
押し込む動作での
打球速度の関係性においては
追加で研究していく必要がある。
5.参考文献
高校野球選手における打球スピード向上を目的としたトレーニングの効果 ～PDCA サイクルに基づいた実践報告～
勝亦陽一 森下義隆
東京農業大学 国立スポーツ科学センター
https://sports-performance.jp/paper/1660/abs1660.pdf
(1)中学硬式野球選手を対象にしたソフトボールを用いた打撃練習が打球速度に与える即時効果
BASEBALL ONE株式会社
(2)野球において重いバットを振るトレーニングが打球速度に与える即時効果
BASEBALL ONE株式会社
(3)野球において軽いバットを振るトレーニングが打球速度に与える即時効果
BASEBALL ONE株式会社
(4)野球において長い棒を振るトレーニングが打球速度に与える即時効果
BASEBALL ONE株式会社
硬式野球用ボールと軟式野球用ボールの打ち出し特性の比較
田渕 規之 鳴尾 丈司
https://fluid.mech.kogakuin.ac.jp/SHD2013/data/pdf/230.pdf
(5)科学的知見を考慮した打球飛距離を伸ばすためのトレーニング・練習
谷中 拓哉 森下 義隆
https://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&rct=j&opi=89978449&url=https://researchmap.jp/read0144454/misc/ 32967911/ attachment_file.pdf&ved=2ahUKEwiv1qeJsKWGAxWpklYBHaOEBlUQFnoECC4QAQ&usg=AOvVaw0m_eesM0mZmu6o _6qB4gC6
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