1.緒言
野球の投球動作において、
ステップ幅(ストライド幅)は
球速や投球メカニクスに
大きな影響を及ぼす
要因の一つである。
先行研究では、
ステップ幅の変化が
投球動作や球速に
どのような影響を与えるか
について検討が行われている。
山下の研究では、
ステップ幅を操作することで
投球速度や膝関節の運動に
変化が生じることが示されている。
ステップ幅を変えることで
踏み込み足への床反力が変化し、
結果として投球速度に
影響を及ぼす可能性があると
報告されている。
また内田ほかの研究では、
ステップ脚の股関節の力学的仕事量と
球速の関連性が調査されている。
この研究では、
ステップ足の股関節の
力学的仕事量が
球速と有意な相関を持つことが
示されており、
ステップ幅の適切な調整が
投球パフォーマンス向上に
寄与する可能性がある
とされている。
これらの研究から、
ステップ幅は
投球動作や球速に影響を及ぼす
重要な要因であると考えられる。
しかし、ステップ幅と
他の投球動作
(並進速度、腕の速度、肩最大外旋角度など)
との関係性については、
未だ明らかになっていない点も多い。
本研究では、
ステップ幅が球速および投球動作に
与える影響を相関分析および
回帰分析を用いて検討し、
投球パフォーマンス向上のための
基礎的知見を提供することを目的とする。
2.方法
本施設のパーソナルレッスンに
通っている選手100名で実施。
選手から全力で投げられる
といった自己申告後、
Rapsodo®︎を用いて、球速を測定。
同時に
モーションキャプチャシステムを用いて、
各種動作パラメータを取得。
測定したデータは、
・球速
・並進速度
・腕の速度
・腕の最大加速度
・肩最大外旋角度、
・肩外旋→リリース距離
・肩外旋→リリース時間
・ステップ幅(cm)
・ステップ幅(%)、
・前足膝関節角度
・胸郭角速度
の11項目。
これらのデータを基に
相関分析を行い、
次に回帰分析を実施して
ステップ幅が
球速や他の投球動作に与える影響を
統計的に検証した。
ステップ幅は個々の選手によって
変化するので、
実際のステップ幅の数値(cm)と
ステップ幅と身長の割合(%)の
2項目に分けて
球速や他の投球動作に与える影響を
統計的に検証した。
3.結果
1. 相関分析
ステップ幅と投球動作の各変数の間には、
以下のような相関関係が確認された。
正の相関(高い順)
・球速とステップ幅(cm)
: 0.774(強い正の相関)
・並進速度とステップ幅(cm)
: 0.739(強い正の相関)
・腕の速度とステップ幅(cm)
: 0.703(強い正の相関)
・肩外旋→リリース距離とステップ幅(cm)
: 0.397(中程度の正の相関)
・胸郭角速度とステップ幅(cm)
: 0.307(中程度の正の相関)
・球速とステップ幅(%)
: 0.302(中程度の正の相関)
負の相関(高い順)
・肩外旋→リリース時間とステップ幅(cm)
: -0.188(弱い負の相関)
相関がほぼない
・前足膝関節角度とステップ幅(cm)
: 0.085(ほぼ相関なし)
・肩最大外旋角度とステップ幅(cm)
: -0.061(ほぼ相関なし)
2. 回帰分析
回帰分析の結果、
以下のことが明らかになった。
球速の予測モデル
・決定係数 (R²)
= 0.800(高い予測精度)
・ステップ幅(cm)の係数
= 1.151(p < 0.001, 有意)
・ステップ幅(%)の係数
= -1.521(p < 0.001, 有意)
この結果から、ステップ幅(cm)の増加は
球速の向上に寄与するが、
ステップ幅(%)が
過度に大きくなると球速に対して
負の影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
4.結論・考察
本研究では、ステップ幅と
投球動作の各項目との関係を分析した結果、
ステップ幅(cm)の増加が
球速、並進速度、腕の速度などと
強い正の相関を持つことが明らかになった。
特に、ステップ幅(cm)が
大きいほど
球速が向上することが示唆され、
ステップ幅が投球パフォーマンスの向上に
寄与する重要な要因であることが
確認された。
一方で、ステップ幅(%)が
過度に大きくなる場合、
球速に負の影響を及ぼす可能性が示され、
ステップ幅の調整には限界が
存在することも分かった。
また、肩外旋からリリースまでの距離や
胸郭角速度とも
中程度の正の相関が見られたが、
肩最大外旋角度や前足膝関節角度とは
ほとんど相関が認められなかった。
これらの結果は、
ステップ幅が
投球動作全体における重要な要素であり、
適切な範囲で調整することで
球速や動作効率を高めることが
可能であることを示唆している。
特に、ステップ幅の増加は
上肢や体幹の速度向上に寄与し、
投球動作の連動性を高める効果が
あると考えられる。
しかし、ステップ幅が
過剰に大きくなると、
体のバランスや効率性が損なわれ、
結果的に球速やパフォーマンスの低下を
招く可能性がある。
先行研究では、
ステップ幅と投球速度の関係について
一貫した結果が得られていない。
渡部ほかの研究では、
ステップ幅と投球速度の間に
有意な相関は認められなかったと
報告されている。
一方、山下の研究では、
投球速度が速い投手は
投球動作中の床反力が大きく、
歩幅が安定していることが
分かっている。
これらの知見は、
本研究の結果と部分的に
一致しており、
ステップ幅の適切な調整が
投球パフォーマンスに影響を
与える可能性を示唆している。
今後の研究では、
投手個々の身体特性に応じた
最適なステップ幅の特定を行っていくことで
投球パフォーマンスを向上させるための
具体的な指針が得られることが期待される。
5.参考文献
島田 一志, 阿江 通良, 藤井 範久, 結城 匡啓, 川村 卓
野球のピッチング動作における体幹および下肢の役割に関するバイオメカニクス的研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbse/4/1/4_2000_007/_pdf/-char/ja
宮西 智久
野球の投球動作のバイオメカニクス的研究一加速局面の上胴と投球腕の運動に着日して-
https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/record/21168/files/1.pdf?utm_source=chatgpt.com
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