前足の地面反力を大きくする練習メニューが確立することができれば腕を速く振ることができるようになり、その結果ボールを長く維持できるようになることで回転数も上がるのではないかと考え、今回は、前足の地面反力を大きくする練習メニューが回転数に与える即時効果を与えるのかを検証しました。
0.目次
1.緒言
ピッチングフォームの指摘として
「前足の膝が抜けてはいけない」
といった言葉を聞くことが多い。
これは前足の膝が抜けてしまうと
地面反力が使えず
回旋動作が遅くなってしまい
その後の腕を速く振り抜くことが
できなくなることから言われている。
陰山ほか（2015）の論文でも、
踏込脚膝関節の角度変化を
小さくすることで、
地面反力が大きくなり
回旋動作を向上させて
未端部のパワーを増大させているとある。
また島田ほか（2004）の論文でも、
球速が速い選手はリリースに向けて
膝関節が伸展を行っていたのに対して、
遅い選手は
リリースに向けて膝が屈曲していき、
腰が沈んでしまい、
力が上半身に伝えられなかったとある。
これらのことからリリースに向けて
膝が屈曲していくではなく、
伸展していく動作が
上半身の加速につながっていく動作になる。
永見ほか（2010）では、
球速と回転数には高い相関関係にあり、
投球時に手およびボールは
肩関節最大外旋位から
リリースに向け
概ね弧を描くように移動していき、
できる限り後半まで
ボールを維持することで
その両方の数価が上していくとある。
そのことから、
前足の地面反力を大きくする
練習メニューが確立することができれば
腕を速く振ることができるようになり、
その結果後半まで
ボールを維持できるようになることで
回転数も上がるのではないかと考えた。
今回は、前足の地面反力を
大きくする練習メニューが
確立させるために
前足の膝を伸ばして
投げる練習を行うことで
回転数に与える即時効果を
明らかにすることを目的とする。
2.方法
本施設のパーソナルレッスンにっている選手
(中学1年生2名、中学2年生3名、中学3年生3名)
8名を実施。
選手から全力で投げられるといった自己申告後、
Rapsodo®を用いて、回転数を測定。
その後、前足の膝を伸ばして
投げるメニュー（図1）を行い、
再度Rapsodo®を使用して
回転数の測定を行う。
前足の膝を伸ばして投げる方法としては、
歩きながら斜め上方向に投げていくが
その際に膝が曲がらないように
リリースに合わせて伸ばすことと
体が前に突っ込まないように
投げ終わったら後ろに着地するように
行わせた。
その際の意識として、
腕を振るのではなく
ムチのように腕が振られるように
意識することを伝えた。
図1 前足の膝を伸ばして投げるメニューの連続写真
3.結果
結果は図2、図3、図4、図5、図6の通り。
実施した8名中5名の回転数が向上し、
数値としては、最高値は120、
平均値としては61向上した。
8人の平均値としては、31となった。
図2 検証メニュー前後のRapsodoデータの比較
図3 回転数測定 増減表
図4 球速測定 増減表
図5 回転数増加選手のRapsodo測定データ
図6 回転数減少選手のRapsodo測定データ
今回、回転数の最大値が上した選手は
5名とも球速の最大値も共に向上した。
また逆に回転数の最大値が
低下した選手は
3名とも球速の最大値も共に低下した。
回転数の最大値が向上した選手の特徴として、
リリース位置が実施後の方が高くなっていた。
逆に回転数の最大値が
低下した選手の特徴として、
リリース位置が実施後の方が
低くなっていた。
最初でも述べたが永見ほか2010）では、
球速と回転数には高い相関関係にあり、
投球時手およびポールは
肩関節最大外旋位からリリースに向け、
概ね弧を描くように移動していき、
できる限り後半までボールを維持することで
その両方の数価が向上していくとある。
できる限り後半まで
ボールを維持することができれば、
必然的にリリース位置は
前になるので高さも低くなる。
リリース位置が高くなったということは、
できる限り後半まで
ポールを維持することができず、
実施後はリリース位置が前ではなく
実施前より後ろ側で投げた
という可能性が考えられる。
それでも回転数が上がったということは、
ポールを維持することはできなくなったが、
それ以上に腕の振る速度が上がったことによって
球速も回転数も向上したのではないかと考えられる。
また逆に回転数が低下した選手は、
リリース位置は低くなっていることから
肘関節が抜けてしまったことや
腹圧が抜けてしまい、
リリース位置が低くなり、
球速も同転数も低下してしまった可能性が
考えられる。
以上のことから、
腕を速く振ることができる
メニューとして行う価値がある。
またリリース位置が高くなったことから、
できる限り後半までボールを
維持することができていないので
他のメニューと併用していくことで
さらに効果を上げることができる可能性がある。
ただ低下している選手もいることから、
肘が抜けてしまって
実施していた可能性が考えられるので
正しく動作ができているのか
確認して実施していかないといけない。
5.参考文献
野球のピッチング動作における力学的エネルギーの流れ
島田 一志 阿江 通良 原井 範久 川村 卓 高橋 佳三
https://www.jstage.jst.go./p/article/ibse/8/1/8_2004_002/_pdf/-char/fa
野大学野球投手における投球動作中の地面反力の経時的変化および力積が投球速度に及ぼす影響
The influence of change in the ground-reaction forces and impulse during pitching on ball velocity in university baseball pitchers
陰山 雅洋（鹿屋体育大学大学院）
鈴木 智晴（鹿屋体育大学大学院）
岩本 峰明（鹿歴体商大学大学院）
杉山 敬（鹿歴体商大学大学院）
前田 明（鹿屋体育大学）
九州体育・スポーツ学研究＝Kyushu journal of physical education and sport
https://researchmap.ja/nifsbaseball-kanoya/published_papers/27894672/attachment_file.pdf
野球投手の手指の動作ーボール回転一軌道の解析
Analysi sof Finger Movement, Ball Spin, and Trajectory in Baseball Pitching
永見 智行（早稻田大•H本学術振興会特別研究員）
Tomoyuki Nagami (Waseda Universit JSPS Research Fellow)
樋口 貴俊（早稲田大）
TakatoshiHiguchi(WasedaUniversity
諸星 潤（早稲田大）
Jun Morohoshi (Waseda University)
矢内 利政（早稲田大）
Toshimasa Yanai (Waseda University) |
彼末 一之（早稲田大）
Kamyuki Kanosue(Waseda Universit)y
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmeshd/2010/0/2010_36/_pdf
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