以前、中学硬式野球選手においてメディシンボールを用いたサイドスロートレーニングが打球速度に与える即時効果の検証を行なったが、コンタクト率が下がってしまい数値も下がってしまうといった傾向が見られた。
前回は中学硬式選手を対象にした検証であったため、今回は中学軟式野球選手を対象にし検証を行なった。
0.目次
1.緒言
以前、中学硬式野球選手において
メディシンボールを用いた
サイドスロートレーニングが
打球速度に与える即時効果(1)の研究では、
重さの設定や正しい動作を
行うことができないと効果が発揮されず
コンタクト率が下がってしまい
数値も下がってしまうといった傾向が見られた。
ただ岸本ほか(2018)では、
メディシンボール投げを行うトレーニング群と、
トレーニングを行わない対照群で
トレーニング群のほうが
メディシンボール投げの飛距離、
スイングスピードが向上し、
また捻転最大角度が大きくなったとある。
前回は中学硬式選手を
対象にした検証であったため、
今回は中学軟式野球選手を対象にした
メディシンボールを用いた
サイドスロートレーニングが
打球速度に与える即時効果を
明らかにすることを目的とする。
2.方法
本施設のパーソナルレッスンに通っている
中学生軟式選手
(中学1年生1名、中学2年生1名、中学3年生4名)
6名を実施。
選手から全力で振れるといった自己申告後、
ティースタンドを用いて
バッティング練習で
5球のバッティングを行い、
Rapsodo®を用いて、打球速度を測定。
その後メディシンボールサイドスローを行い、
再度ティースタンドを用いて打撃し、
Rapsodo®を使用して打球速度の測定を行う。
選手が測定時に使用するバットは
それぞれが普段から使用しているバットを使用した。
メディシンボールサイドスローの方法としては、
両手でメディシンボールを持ち
スイングを行うように動作をしていき
センター方向に向かって投げるように指示した。
また実施する際の意識としては、
軸足の股関節に体重を乗せて前足は上げて
右打者は右手、左打者は左手で後ろから
押し込むように投げることを指示した。
図1 検証で使用したメディシンボール(重さ3kg)
3.結果
結果は図2、図3、図4、図5の通り。
実施した6人中5人が打球速度が向上し、
数値としては最高値は5.3km/h、
平均値としては3.0km/h向上した。
6人の平均値としては、1.8km/hとなった。
図2 検証メニュー前後のRapsodoデータの比較
図3 打球速度測定 増減
図4 打球速度増加選手のRapsodo測定データ
図5 打球速度減少選手のRapsodo測定データ
4.結論・考察
増加人数としては5人となり
平均値は1.8km/hとなったことから、
打球速度向上につながったと考えられる。
今回の測定では、
中学硬式野球選手において
メディシンボールを用いた
サイドスロートレーニングが
打球速度に与える即時効果(1)とは違い
打球速度が向上した選手も多くなった。
中学硬式野球選手(1)では、
メディシンボールサイドスローを
実施した後の測定では
打球角度や回転数の数値が高くなっており
正確にバットとボールを
コンタクトさせることが
できなかったと考えられたが、
中学軟式野球選手は、
3kgのメディシンボールを用いて行った結果
スイングにおける感覚が変わってしまい
正確にバットとボールを
コンタクトさせるという点において
負の即時効果が働くことがなかったと言える。
今回の結果から考えられる要因として、
軟式野球用ボールと
硬式野球用ボールの違いによる
スイングの違いでは無いかと考えられる。
田渕ほか(2013)では、
硬式野球用ボールと軟式野球用ボールの
打ち出し特性の比較が研究されている。
その中の違いとして、
バットとボールの接触時間が
軟式野球用ボールの方が長く測定されたとある。
軟式野球用ボールでは、
バットの中心からボールの高さが
離れるほど打球速度は低下していき
打球の回転数は増えていき
打球角度の数値も増えていくとある。
このことから軟式野球選手は
硬式野球選手よりバットの中心で
ボールを捉えようとスイングしていた結果、
中学硬式野球選手よりも正確に
バットとボールをコンタクトさせるという点に、
負の即時効果がなかったのではないかと考えられる。
以上のことから、
中学軟式野球選手において
メディシンボールを用いた
サイドスロートレーニングは
打球速度の即時効果があり
数値の向上につながると言える。
ただ、勝亦ほか(2017)の論文にもあるが
その際も重さの設定や
正しい動作を行わせるように指示しないと
正しい動作にならず
コンタクト率に影響が出てしまうかもしれない。
また、岸本ほか(2018)では
継続して取り組むことで
スイングスピードが向上したとあるので
継続的な取り組みとしても実施する価値はある。
5.参考文献
(1)中学硬式野球選手においてメディシンボールを用いたサイドスロートレーニングが打球速度に与える即時効果
BASEBALL ONE株式会社
メディシンボール投げトレーニングが野球におけるバットスイングスピードに及ぼす影響について 岸本昌弘 (競技スポーツ学科 スポーツ情報戦略コース)
指導教員 高橋 佳三
https://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&rct=j&opi=89978449&url=https://biwako-seikei.repo.nii.ac.jp/record/5060/ files/ 292%20%E5%B2%B8%E6%9C%AC.pdf&ved=2ahUKEwiPjb6k7aqGAxX0r1YBHbu2BUcQFnoECB4QAQ&usg=AOvVaw 2K7YGAU0B1zCsxZjQyO3UR
硬式野球用ボールと軟式野球用ボールの打ち出し特性の比較
田渕 規之 鳴尾 丈司
https://fluid.mech.kogakuin.ac.jp/SHD2013/data/pdf/230.pdf
高校野球選手における打球スピード向上を目的としたトレーニングの効果 ～PDCA サイクルに基づいた実践報告～
勝亦陽一 森下義隆
東京農業大学 国立スポーツ科学センター
https://sports-performance.jp/paper/1660/abs1660.pdf
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