1.緒言
野球における
投手のパフォーマンスを評価する際、
変化球の質は打者との駆け引きにおいて
重要な要素となる。
近年注目を集めている「スイーパー」は、
横方向への大きな変化を
特徴とする新しい変化球であり、
特にプロレベルでは
有効性が高いとされている。
これまでの研究では、
変化球のリリース時の指先の使い方や
腕の角度に着目した分析が多く行われてきたが、
スイーパーの変化量と身体的および
動作的要因の関係性については
十分に検証されていない。
本研究では、スイーパーの変化量と
身体的および動作的要因との関係性を
明らかにすることを目的とする。
2.方法
対象者は8名
(中学生3名、高校生1名、大学生2名、社会人2名)で実施。
選手から全力で投げられるといった
自己申告後、
Rapsodo®︎を用いて、
1.球速
2.回転数
3.回転効率
4.回転方向
5.ジャイロ角度
6.縦の変化量
7.横の変化量
8.リリースの高さ
9.リリースのサイド
の9項目を測定。
同時にモーションキャプチャーシステムを用いて、
各種動作パラメータを取得。
測定したデータは、
1.並進速度
2.腕の速度
3.腕の最大加速度
4.肩最大外旋角度
5.最大外旋位置からリリースまでの距離
6.最大外旋位置からリリースまでの時間、
7.ステップ幅
8.前足膝関節角度
9.胸郭角速度
の9項目。
また体組成計のデータとして、
1.身長
2.体重
3.筋肉量
4.体脂肪率
5.骨格筋量
6.除脂肪指数
7.骨格筋指数
の7項目を測定。
身体的データとして、
1.垂直跳び
2.MBチョップスロー
3.カイザー
4.肩屈曲
5.肘屈曲
6.肘進展
7.前腕回内角度
8.肩外旋角度(上向き)
9.肩外旋角度(下向き)
10.胸郭回旋
11.前腕回外角度
12.肩甲骨内転
の12項目を測定。
これらのデータを基に
相関分析を行い
身体的および動作的要因が
スイーパーの変化量に与える影響を
統計的に検証した。
スイーパーの定義としては
以下の内容でスライダーと分けて
球種を判別した。
1.横変化量が25cm以上、
縦の変化が-10cm以下(スイーパー①)
2.ストレートのMAX球速に対して
85~80%代の球速(スイーパー②)
3.ストレートのMAX球速に対して
85~80%代の球速かつ横変化量が25cm以上、
縦の変化が-10cm以下(スイーパー③)
4.それに該当しない球種は
スライダー(非スイーパー)
3.結果
1.スイーパー①を投げられる選手の特徴
【強い正の相関】
・ステップ幅(相関係数:+0.50)
・胸郭角速度(+0.36)
・ジャイロ角度(+0.38)
【強い負の相関】
・球速(-0.52)
・回転効率(-0.47)
・リリースの高さ(-0.45)
2. スイーパー②を投げられる選手の特徴
【強い正の相関】
・ステップ幅(+0.50)
・肩外旋角度(+0.40)
・並進速度(+0.40)
【強い負の相関】
・球速(-0.52)
・回転効率(-0.47)
3.スイーパー③を投げられる選手の特徴
【強い正の相関】
・胸郭角速度(+0.36)
・肩外旋角度(+0.40)
・ジャイロ角度(+0.38)
【強い負の相関】
・球速(-0.52)
・横の変化量(-0.50)
・リリースの高さ(-0.45)
4.スイーパー①~③を投げられない選手(非スイーパー)の特徴
【正の相関】
・球速
・回転効率
・回転数
・リリースの高さ
【負の相関】
・ステップ幅
・ジャイロ角度
・肩外旋角度
・胸郭角速度
4.結論・考察
本研究は、スイーパー投手の身体的および
動作的特徴を明らかにすることを目的とした。
その結果、スイーパーを投げる投手は、
ステップ幅が広く、胸郭角速度や
肩外旋角度が大きい傾向が見られた。
また、ボールのジャイロ角度との
正の相関、一方で球速や回転効率、
リリースの高さとは
負の相関が確認された。
これらの特徴は、スイーパーが
単に腕先の操作だけでなく、
下半身から体幹へと効率よくエネルギーを伝達し、
体幹の強力な回旋(川村ら, 2006)を利用した
全身運動によって生み出されることを示唆する。
特に、ジャイロ角度の大きさと回転効率の低さは、
スイーパー特有の大きな横変化を生み出すための
ボール回転の質(例えば、ジャイロ成分の活用)を
示しており、
これはスライダーのボール軌道における
回転軸の影響を指摘した溝口ら(2004)の研究とも
関連が深い。
球速の低下やリリースの高さの低下は、
変化量を最大化するための投球戦略や、
横方向の回転を加えやすい
リリースポイントの選択を
示唆している可能性がある。
本研究は対象者数が少ないという限界はあるものの、
スイーパーという新しい球種の特性理解に向けた
重要な知見を提供した。
今後の研究では、より多くの対象者による分析や、
詳細な投球メカニズムの解明が期待される。
5.参考文献
川村卓, 藤井範久, 村主景, 季冽, 阿江通良 (2006).
野球投手の投球動作における体幹の回旋角度および角速度と球速との関係. 体育学研究, 51(6), 941-953.
URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/51/6/51_KJ00004447716/_article/-char/ja/
溝口秀雪, 平野裕一, 内田和男 (2004).
スライダーの球速と回転数・回転軸方向がボール軌道に及ぼす影響. 体育学研究, 49(1), 29-41.
URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/49/1/49_KJ00003311764/_article/-char/ja/
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